システムのデータをExcelに取り込み、別のファイルやシートへ転記する作業は、日常業務の中でよく行われるものです。
しかし、転記ミスやデータ抜け、数値のズレなどは気づきにくく、後から大きなトラブルに発展することもあります。
そこで本記事では、「転記元」と「転記先」のデータを効率よくチェックするためのExcel活用テクニックを詳しく解説します。
関数を使った照合方法、条件付き書式を使った異常検出、VBAを使った自動化チェックなど、実務でそのまま使える方法を紹介します。
Excelでデータ転記チェックが必要な理由
Excelでデータを転記する作業は、一見シンプルに見えますが、実際には非常にミスが起こりやすい工程です。
特に以下のようなケースでは、チェックが欠かせません。
- システムから出力したCSVをExcelで整形し、別シートに貼り付ける場合
- 顧客マスタや商品マスタなど、データベースの一部を別ファイルに抜き出して利用する場合
- 売上データを月次報告用に転記する場合
たとえ「コピー&ペースト」だけの作業でも、列の順番やデータ型の違いでズレが生じることがあります。
また、Excelでは数値が自動的に丸められたり、日付の形式が変わったりすることもあります。
こうしたリスクを最小限に抑えるには、「チェックを仕組み化する」ことが大切です。
次の章からは、具体的なチェック方法を順に紹介していきます。
方法①:COUNTIF関数でデータ一致をチェックする
最も手軽な方法が、COUNTIF
関数を使うやり方です。
転記元と転記先に同じデータが存在するかどうかを判定できます。
使い方例
たとえば、転記元(A列)と転記先(B列)に同じIDがあるかを確認したい場合、
C列に以下のような式を入れます。
=IF(COUNTIF(B:B, A2)>0, "○", "×")
これで、「○」が表示されれば転記先に同じデータが存在することを意味します。
「×」の場合は、データが抜けている、または入力ミスがある可能性があります。
応用ポイント
- 複数列(例:ID+名前)の一致確認をしたい場合は、
&
で結合してチェック=IF(COUNTIF(B:B, A2&B2)>0, "○", "×")
- 「○」や「×」の代わりに、条件付き書式でセルの色を変えると視覚的にわかりやすくなります。
方法②:EXACT関数で文字列の完全一致を確認
Excelでは「見た目は同じでも実は違う」ケースがよくあります。
たとえば、「abc」と「abc(全角スペース付き)」や「A」と「a」は別物です。
こうした微妙な違いをチェックするには、EXACT
関数が便利です。
使い方例
=IF(EXACT(A2, B2), "一致", "不一致")
この関数は、全角・半角、大文字・小文字、スペースなども含めて完全に一致した場合のみ「一致」と判定します。
活用ポイント
- 文字列の整形後に比較する場合は、
TRIM
関数やCLEAN
関数と組み合わせて使うのがおすすめ。
例:=IF(EXACT(TRIM(A2), TRIM(B2)), "一致", "不一致")
<h2>方法③:VLOOKUP関数でデータの存在確認を行う</h2>
VLOOKUP
関数は、転記先に「対応するデータが正しく存在するか」を確認するのに役立ちます。
たとえば、転記元の顧客IDに対して、転記先の顧客名が正しいかを照合することが可能です。
使い方例
=IF(VLOOKUP(A2, 転記先!A:B, 2, FALSE)=B2, "OK", "NG")
この式は、転記元シートのA2セル(ID)を転記先シートで検索し、
その顧客名(2列目)とB2セルの内容を比較します。
注意点
- 検索範囲の先頭列に検索キーがある必要があります。
- 大量データを扱う場合は処理が重くなることがあるため、必要列だけを指定すると良いです。
方法④:条件付き書式で不一致データを色分けする
関数を入力しなくても、「条件付き書式」で不一致を視覚的に見つける方法もあります。
手順
- 転記元データ(A列)と転記先データ(B列)を並べて表示
- B列を選択して「ホーム」→「条件付き書式」→「新しいルール」
- 「数式を使用して書式設定するセルを決定」を選択
- 式に以下を入力:
=A1<>B1
- 書式を赤背景などに設定
これで、A列とB列で値が異なるセルが自動的に色付けされます。
大量データでも一目で差異を発見できるため、非常に効率的です。
方法⑤:データの件数・合計値で整合性を確認
すべての行を比較するのが大変な場合、件数や合計値を比較する「集計チェック」も有効です。
件数チェック
=COUNTA(A:A)=COUNTA(B:B)
TRUEなら行数が一致していることを意味します。
合計値チェック
=SUM(A:A)=SUM(B:B)
数値項目(売上金額や数量など)が一致しているかを確認できます。
件数・合計値が一致していれば、転記ミスの可能性は低いと判断できます。
ただし、部分的なズレまでは検知できないため、他の方法と併用するのが理想です。
方法⑥:Power Queryで自動照合する
Power Queryを使うと、2つのExcelデータを突き合わせて一致・不一致を自動抽出できます。
手順の概要
- 「データ」タブ → 「データの取得」→「テーブルまたは範囲から」
- 転記元と転記先の2つのテーブルをPower Queryに取り込む
- 「クエリの結合」で共通キー(例:ID)を指定して結合
- 結果として一致/不一致の行を表示
この方法は、毎回手作業でチェックする必要がなく、定期的なデータ整合性確認にも使えます。
また、更新も「更新ボタンをクリックするだけ」で完了します。
方法⑦:VBAで自動チェックマクロを作る
手作業で関数を設定するのが面倒な場合、VBA(マクロ)を使って自動化するのもおすすめです。
簡単なサンプルコード
Sub CheckData()
Dim i As Long
Dim ws As Worksheet
Set ws = ThisWorkbook.Sheets("Sheet1")
For i = 2 To ws.Cells(Rows.Count, 1).End(xlUp).Row
If ws.Cells(i, 1).Value <> ws.Cells(i, 2).Value Then
ws.Cells(i, 1).Interior.Color = vbYellow
ws.Cells(i, 2).Interior.Color = vbYellow
End If
Next i
MsgBox "チェック完了しました。"
End Sub
このマクロは、A列とB列を比較し、不一致があれば黄色でハイライトします。
ファイルが大きい場合でも高速で処理でき、繰り返し作業に最適です。
方法⑧:重複・抜けデータを検出する
転記ミスには「重複」や「抜け」もよくあります。
これらはExcelの「重複の削除」機能やCOUNTIF関数を応用して確認できます。
重複チェック
=IF(COUNTIF(A:A, A2)>1, "重複", "")
抜けチェック(転記元にあるが転記先にない)
=IF(COUNTIF(転記先!A:A, A2)=0, "抜け", "")
条件付き書式と組み合わせると、一覧で抜けを発見できます。
方法⑨:ファイル間比較なら「スプレッドシート比較ツール」も活用
Excel 2013以降には、「スプレッドシート比較(Spreadsheet Compare)」というツールが付属しています。
これは、2つのExcelファイルを自動的に突き合わせ、差分を一覧表示してくれる便利な機能です。
使用手順
- Windowsスタートメニューで「Spreadsheet Compare」と検索
- 起動後、「比較するファイル1」と「ファイル2」を選択
- 「比較」をクリック
すると、変更箇所や数式の差、書式変更などが自動でレポートされます。
人手では見落とすような細かい違いまで確認できます。
方法⑩:チェックリストを使って目視確認を効率化
システム間や部署間でデータを転記する場合、Excel関数だけでなく「チェック体制」も重要です。
以下のようなチェックリストを作っておくと安心です。
- 転記元と転記先の列構成は一致しているか
- データ件数・合計値は一致しているか
- 日付や桁数に異常はないか
- IDやコードの重複・抜けがないか
- 数値のフォーマット(小数点・通貨記号など)は揃っているか
こうしたリストをテンプレート化しておくことで、作業者が変わっても一定の品質を保つことができます。
まとめ
Excelでのデータ転記作業は、慣れていてもヒューマンエラーが起こりやすいものです。
しかし、関数・条件付き書式・Power Query・VBAなどを上手に活用すれば、
短時間で高精度なチェックを行うことができます。
おすすめの組み合わせ:
- 小規模データ → COUNTIF+条件付き書式
- 中規模データ → VLOOKUP+集計チェック
- 大規模データ → Power QueryまたはSpreadsheet Compare
- 定期運用 → VBAマクロによる自動化
日常業務の中で「転記後チェック」を仕組み化することで、確認漏れを防ぎ、信頼性の高いデータ管理が可能になります。
今日からぜひ、あなたのExcel業務にも取り入れてみてください。
コメント