「確信犯」の本来の意味を知っていますか?誤用されやすい言葉を正しく理解する

豆知識
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「それ、完全に確信犯だよね」という言葉を日常会話やネットで耳にすることは多いでしょう。多くの場合、この表現は「わざとやった」「悪いと分かっていてやった」という意味で使われています。しかし実は、「確信犯」という言葉には、本来まったく異なる意味があります。誤った使い方が広く定着しているため、本来の意味を知らないまま使っている人も少なくありません。この記事では、「確信犯」の正しい意味や語源、なぜ誤用が広まったのか、そして正しい使い方までを、わかりやすく解説します。

「確信犯」の一般的な使われ方

現在の日本語において「確信犯」という言葉は、日常会話やSNS、ニュースのコメント欄などで頻繁に使われています。その多くは、「悪いと分かっていながら、あえてやる行為」や「わざとルールを破る人」を指す表現です。たとえば、「遅刻するって分かっていて、準備をしなかったあの人は確信犯だ」「ネタバレをするなんて確信犯だ」といった使われ方が典型的です。

この用法では、「確信=悪いことだと分かっている」というニュアンスが含まれており、「故意犯」や「悪意のある行為」とほぼ同義として扱われています。そのため、多くの人が「確信犯=悪いことと自覚して行う犯罪・行為」と理解しています。しかし、この意味は本来の定義とは大きく異なります。

「確信犯」の本来の意味とは

「確信犯」の本来の意味は、「自分の行為が犯罪であることを認識していながら、それが正しい、あるいは正義だと確信して行う犯罪」を指します。ここで重要なのは、「悪いと分かってやっている」という点ではなく、「正しいと信じてやっている」という点です。

つまり、確信犯とは、行為者が自分の価値観や信念に基づき、「これは社会的には違法かもしれないが、自分にとっては正義である」と確信して行う犯罪行為を意味します。単なるルール違反や悪意ある行動とは、根本的に性質が異なるのです。

この意味は、法律学や犯罪学の分野で使われてきた専門的な概念に由来します。そのため、日常的な「わざとやった」という意味での使用は、厳密には誤用とされています。

語源と法律学における位置づけ

「確信犯」という言葉は、ドイツの刑法学における概念「Überzeugungstäter(ユーバーツォイクングス・テーター)」の訳語として生まれました。この言葉は、「信念に基づいて行動する犯罪者」という意味を持ちます。

法律学では、犯罪を犯す動機や心理状態は重要な研究対象です。確信犯は、金銭欲や衝動、悪意などによって行われる一般的な犯罪とは異なり、強い思想・宗教・政治的信念に基づいて行われる点が特徴です。たとえば、宗教的信条に基づいて法律を破る行為や、政治的理想の実現を目的とした違法行為などが、確信犯の典型例とされています。

このように、確信犯は「犯罪であると理解していながら、それでもなお正しいと信じて行う行為」という、非常に限定された意味を持つ言葉なのです。

本来の意味で使われる具体例

確信犯の本来の意味を理解するために、いくつか具体例を挙げてみましょう。

たとえば、政治的な思想に基づいて法律で禁止されている行為を行うケースがあります。本人は「社会を良くするため」「不正な制度を正すため」と確信して行動しており、違法であること自体は理解していますが、それでも自分の行為を正義だと信じています。

また、宗教的信念に基づいて、国家の法律よりも宗教上の教義を優先する行為も、確信犯に該当する場合があります。この場合も、行為者は「法律違反である」という認識を持ちながら、「神の教えに従っているのだから正しい」と確信しています。

これらの例から分かるように、確信犯は「悪いことをしている自覚がある人」ではなく、「正しいことをしていると信じている人」を指す言葉なのです。

なぜ誤用が広まったのか

では、なぜ「確信犯=悪いと分かっていてやる行為」という誤った意味が、これほどまでに広まったのでしょうか。その理由の一つは、「確信」という言葉の一般的なイメージにあります。

日常語としての「確信」は、「間違いないと強く思うこと」という意味で使われます。そのため、「確信してやった=分かっていてやった」と解釈されやすく、「確信犯=分かっていてやった犯人」という理解が自然に広まっていきました。

さらに、テレビやネット記事、SNSなどでの誤用が繰り返されることで、その意味が一般化してしまったことも大きな要因です。多くの人が誤った意味で使うことで、それが「普通の使い方」として定着してしまったのです。

「故意犯」との違い

誤用された「確信犯」の意味に近い言葉として、「故意犯」があります。故意犯とは、結果が生じることを認識しながら行為を行う犯罪を指し、「うっかり」ではなく「わざと」行った犯罪全般を含みます。

日常会話で使われている「確信犯」は、実際にはこの「故意犯」の意味合いで使われていることがほとんどです。しかし、法律学的には両者は明確に区別されます。確信犯は故意犯の一種ではありますが、「正義だと信じている」という思想的・信念的要素が加わる点で、単なる故意犯とは異なります。

この違いを理解すると、「確信犯」を安易に使うことが、いかに本来の意味から離れているかが分かるでしょう。

現代日本語としての扱い

国語辞典の中には、すでに「悪いと分かっていて、あえて行う行為」という意味を併記しているものもあります。これは、言葉の使われ方が時代とともに変化することを反映した結果です。

そのため、「確信犯」を誤用だと知りつつも、日常会話で使うこと自体が必ずしも間違いだと断定される場面ばかりではありません。ただし、文章を書く場面や、正確さが求められる場では、本来の意味を理解したうえで使うことが重要です。

特に、ビジネス文書や論説、教育の場などでは、誤解を招かないよう注意が必要でしょう。

正しく使うためのポイント

「確信犯」を正しく使うためには、「その人は何を確信しているのか」を考えることが大切です。ただ「悪いと分かっている」だけではなく、「それでも正しいと信じているのかどうか」が判断基準になります。

もし「わざとやった」「分かっていてやった」という意味を表したい場合は、「故意に」「意図的に」「分かっていて」など、別の表現を使う方が適切です。言葉の正確な意味を理解し、場面に応じて使い分けることで、表現力も信頼性も高まります。

まとめ

「確信犯」という言葉は、一般的に使われている意味と、本来の意味が大きく異なる代表的な日本語の一つです。本来は、「犯罪であると認識しながらも、それを正義だと確信して行う行為」を指す、非常に限定された概念でした。しかし、日常的な誤用が広まった結果、「悪いと分かっていてやる行為」という意味で定着しつつあります。言葉の変化を理解しつつも、正確さが求められる場面では本来の意味を意識して使うことが大切です。「確信犯」という言葉の背景を知ることで、日本語への理解も一段と深まるでしょう。

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