職場での人間関係や家庭でのコミュニケーションで、「言いたいことがあるけど、うまく伝えられない」と悩むことはありませんか。
感情的にならず、相手を責めずに自分の意見を伝える方法として注目されているのが「DESC法(デスク法)」です。
この手法は、アメリカの心理学者ゴードン氏が提唱した「アサーション(自己主張)」の一種で、対立を避けながら建設的に話し合うためのフレームワークです。
この記事では、DESC法の意味や使い方、実際の例文、ビジネス・家庭での活用法までわかりやすく解説します。
DESC法とは?意味と目的を解説
DESC法とは、次の4つのステップの頭文字を取ったコミュニケーション技法です。
- D(Describe)=状況を客観的に描写する
- E(Express)=自分の気持ちや考えを伝える
- S(Specify)=相手にしてほしいことを具体的に伝える
- C(Choose)=結果(相手が応じた場合と応じなかった場合)を伝える
この方法は、相手を非難するのではなく「事実」と「感情」を整理し、自分の主張を冷静に伝えるためのフレームワークです。
特にビジネスシーンでは、上司や部下、取引先との関係を壊さずに意見を伝える際に役立ちます。
また、家庭や友人関係でも「気持ちを我慢しすぎない」「相手との関係を大切にしながら伝える」ための有効な手段となります。
DESC法の4ステップを具体的に解説
D:Describe(描写する)
まずは、事実を客観的に伝える段階です。
感情的な表現や憶測を避け、誰が聞いても同じように理解できる事実を述べましょう。
例文:
「昨日の会議で、私が発言した内容に対して笑い声がありました。」
→「あなたが私を笑った」と決めつけず、「会議で笑い声があった」という客観的な事実を述べています。
E:Express(感情を表現する)
次に、自分の気持ちや考えを正直に伝えます。
ただし、相手を責める口調ではなく、「私は〜と感じた」というIメッセージで伝えることがポイントです。
例文:
「その時、少し傷ついた気持ちになりました。」
→「あなたが悪い」と言うよりも、自分の感情に焦点を当てることで、相手に防衛的な反応を起こさせにくくします。
S:Specify(提案する)
ここでは、相手にどのような行動をしてほしいのかを明確に伝えます。
曖昧なお願いではなく、具体的な行動に落とし込みましょう。
例文:
「次の会議では、発言が終わるまで聞いてもらえるとありがたいです。」
このように、相手が「何をすればいいのか」を理解しやすいように伝えるのが大切です。
C:Choose(結果を伝える)
最後に、相手が要望に応じた場合・応じなかった場合の結果を伝えます。
これは脅しではなく、「お互いにとってどうなるか」を明確にするためのステップです。
例文:
「もしそうしてもらえたら、安心して意見を言えるようになると思います。」
「もし同じようなことが続くと、今後発言を控えたくなるかもしれません。」
このように、相手が行動を変えることで得られる「良い結果」を伝えると、より前向きな反応が得られます。
DESC法を使うメリット
- 感情的にならずに伝えられる
感情をコントロールしながら話すため、冷静なやり取りが可能になります。 - 相手との関係を壊さない
非難や命令ではなく、協力を求める形で伝えられるため、信頼関係を維持できます。 - 問題解決につながる
具体的な行動提案を含むため、話し合いが「解決」に向かいやすくなります。 - 自分の気持ちを抑え込まない
言いたいことを我慢せずに伝えることで、ストレスの軽減にもつながります。
DESC法の注意点
DESC法は万能ではありません。使い方を誤ると逆効果になることもあります。
- 感情的な言葉を避ける
怒りや批判の言葉を混ぜると、相手の防衛反応を引き起こします。 - タイミングを選ぶ
相手が忙しい時や感情的な時に話すのは避けましょう。 - 一方的にならない
自分の意見を伝えた後は、相手の話もきちんと聞く姿勢が大切です。 - 「C」の伝え方に注意
結果を伝える際に「脅し」や「仕返し」のように聞こえると逆効果になります。
DESC法のビジネスでの活用例
上司への意見を伝える場合
例文:
「昨日の会議で新しい提案の時間が短く感じました(D)。
もう少し時間をいただけると、より具体的な資料を出せると思いました(E)。
次回の会議では5分ほど追加で時間をいただけないでしょうか(S)。
そうしていただければ、チーム全体にとっても有益な提案ができると思います(C)。」
このようにDESC法を使えば、上司に対しても丁寧かつ前向きに意見を伝えることができます。
DESC法の家庭での活用例
パートナーへのお願いをする場合
例文:
「最近、夕食の後の片付けを私がすることが多いように感じます(D)。
正直、少し疲れてしまう時があります(E)。
週に2回だけでも、片付けを一緒にしてもらえると助かります(S)。
そうしてもらえたら、私ももっとゆっくり休めて、会話の時間も増えると思います(C)。」
家庭でも感情をぶつけるのではなく、協力を求める形で伝えられます。
DESC法を使うときのコツ
- 「Iメッセージ」で話す
「あなたは〜」ではなく「私は〜」で始めることで、相手を責めずに伝えられます。 - 短く、明確に
長すぎる説明は相手の理解を妨げるため、1〜2分でまとめる意識を持ちましょう。 - 練習しておく
いきなり本番で使うのは難しいので、事前にシミュレーションしておくとスムーズに話せます。
DESC法とアサーティブ・コミュニケーションの関係
DESC法は、アサーティブ・コミュニケーション(自己主張の技法)の代表的な手法のひとつです。
アサーティブとは、「自分も相手も大切にする」考え方で、攻撃的でも受け身でもない「対等なコミュニケーション」を意味します。
アサーティブな姿勢を持つことで、DESC法はさらに効果を発揮します。
単に話す技術ではなく、「相手の立場を理解しながら、誠実に伝える」心構えが重要です。
DESC法を使う練習方法
- 日常の小さな場面(コンビニ、職場の雑談など)で少しずつ試してみる
- メモ帳に「D・E・S・C」を書き出して整理する
- 鏡の前で話す練習をする
- 同僚や友人にフィードバックをもらう
練習を重ねることで、自然にDESC法が身につき、どんな場面でも落ち着いて話せるようになります。
まとめ
DESC法は、相手を傷つけずに自分の意見を伝えるための強力なツールです。
- D(事実を述べる)
- E(気持ちを伝える)
- S(具体的に提案する)
- C(結果を伝える)
この4ステップを意識するだけで、コミュニケーションの質は格段に向上します。
ビジネスでも家庭でも、「言いたいことがあるけど言えない」という悩みを解消し、より良い人間関係を築く第一歩となるでしょう。


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