「すみません、あいにく〇〇は外出しております。」
ビジネスシーンや日常会話でよく耳にする「あいにく」という言葉。
なんとなく使っている人も多いですが、実は使い方やニュアンスを誤解していることもあります。
本記事では、「あいにく」の正しい意味、使い方、そして場面別の例文をわかりやすく解説します。
丁寧で自然な日本語表現を身につけたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
あいにくの意味とは?
「あいにく」とは、都合が悪いことや期待に添えないことを丁寧に伝える言葉です。
英語で言えば「unfortunately(残念ながら)」に近い意味を持ちます。
つまり、「あいにく」は相手の期待をやわらかく断る表現として使われます。
たとえば、
- 「あいにく本日は担当者が不在でして…」
- 「あいにく在庫を切らしておりまして…」
のように、相手に対して直接「無理です」「できません」と言うよりも、柔らかい印象を与えることができます。
なお、「あいにく」は漢字では「生憎」と書きますが、ビジネス文書などでは平仮名の「あいにく」が一般的です。
あいにくの語源
「あいにく」はもともと「相憎(あいにく)」という言葉が語源だといわれています。
「互いに憎しみ合う」という意味から転じて、「気持ちがすれ違う」「思い通りにいかない」という意味が生まれたとされています。
つまり、本来の「あいにく」は「タイミングが合わない」「運悪く」というニュアンスを持っており、現代でも「都合が悪い」「あいにくの天気」といった使い方をします。
あいにくの使い方のポイント
「あいにく」は便利な言葉ですが、使う場面を間違えると失礼になることもあります。
以下の3つのポイントを押さえておきましょう。
- 基本的に否定的な内容とセットで使う
例:「あいにく本日は休業日です」「あいにくその商品は完売しました」 - 自分側の事情をやわらかく伝える時に使う
例:「あいにく手が離せません」「あいにく予定が入っておりまして」 - ポジティブな内容には使わない
×「あいにく天気が良いです」
このような使い方は不自然です。「あいにく」はあくまで「残念」「都合が悪い」といった意味で使います。
ビジネスシーンで使える「あいにく」の例文
例文①:電話応対
「あいにく、担当の○○はただいま席を外しております。戻りましたら折り返しご連絡いたします。」
→ 相手の要望にすぐ対応できない状況を丁寧に伝える定番フレーズです。
例文②:来客対応
「あいにく社長は本日外出しておりまして、夕方まで戻らない予定です。」
→ 社外の来客に対しても使える丁寧な表現です。「申し訳ありません」と組み合わせても自然です。
例文③:メールでのやり取り
「あいにく本日は外出予定のため、明日の午前中に改めてご連絡いたします。」
→ メールでも「申し訳ございませんが」「恐れ入りますが」といったクッション言葉と組み合わせるとより丁寧になります。
例文④:営業メールでの断り
「あいにく弊社では現在その分野での取引を行っておりません。」
→ 断りのニュアンスをやわらげ、角を立てずに伝えることができます。
例文⑤:予定調整
「あいにくその日はすでに別件が入っております。別の日程でご都合はいかがでしょうか。」
→ 「断る」だけでなく、代替案を添えることで印象がぐっと良くなります。
日常会話での「あいにく」の使い方
「あいにく」はビジネスだけでなく、日常会話でもよく使われます。
以下のようなシーンでも自然に活用できます。
例文⑥:友人との会話
A:「今夜飲みに行かない?」
B:「あいにく、今日は家族と出かける予定なんだ。」
→ 断るときも角が立ちにくく、柔らかい印象になります。
例文⑦:天候の話
「あいにくの雨で、運動会が中止になってしまった。」
→ 「あいにく」は自然現象などにも使われます。「あいにくの天気」「あいにくの雨」などの形でよく見られます。
例文⑧:訪問時の対応
「せっかくお越しいただいたのに、あいにく留守にしておりまして…」
→ 相手に迷惑をかけたことを丁寧に伝える表現です。ビジネスでも日常でも使える万能フレーズです。
「あいにく」を使うときの注意点
「あいにく」は便利ですが、状況によっては冷たく感じられることもあるので注意が必要です。
たとえば、単に「あいにくです」とだけ言うと、事務的でそっけない印象を与えます。
そのため、以下のように一言添える工夫が大切です。
- 「あいにくですが、申し訳ございません。」
- 「あいにく不在にしております。恐れ入りますが、後ほどおかけ直しください。」
- 「あいにくご希望には添えませんが、別のご提案をさせていただければと思います。」
つまり、「あいにく」は相手への気遣いを表す前置きとして使うことで、丁寧で思いやりのある印象を与えられます。
「あいにく」と似た言葉との違い
「あいにく」と似た表現には、「残念ながら」「申し訳ありませんが」「恐れ入りますが」などがあります。
それぞれ微妙にニュアンスが異なります。
| 表現 | ニュアンス | 使用シーン |
|---|---|---|
| あいにく | 都合が悪い・運が悪い | 断る・謝る・不在を伝える |
| 残念ながら | 感情的な残念さを強調 | 試験や結果の報告など |
| 恐れ入りますが | 相手に依頼・お願いをする前置き | 丁寧な依頼メールなど |
| 申し訳ありませんが | 謝罪を強調 | ミスや迷惑をかけた場面 |
たとえば、
- 「あいにく在庫が切れています。」(中立的)
- 「残念ながら在庫が切れています。」(気持ちを強調)
- 「申し訳ありませんが在庫が切れています。」(謝罪を強調)
というように、場面や相手との関係性によって使い分けましょう。
まとめ
「あいにく」は、相手の期待に添えない状況を丁寧に伝える日本語表現です。
単なる断りの言葉ではなく、相手への配慮や思いやりが込められたフレーズとして使われます。
- 意味:都合が悪く、相手の希望に応えられない
- 使用場面:不在・断り・謝罪など
- 注意点:そっけなくならないよう、一言添える
最後にもう一度、代表的な例文を振り返っておきましょう。
- あいにく、担当者はただいま外出しております。
- あいにく本日は予約がいっぱいでございます。
- あいにくですが、その日は予定が入っております。
- あいにくの雨で、予定が変更になりました。
- あいにくお力にはなれませんが、別の方法を提案いたします。
ビジネスでも日常でも使える万能表現「あいにく」。
正しく使いこなして、丁寧で印象の良いコミュニケーションを心がけましょう。


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